半年以上経過しても脳は変化する(可塑性)

脳梗塞 リハビリ

「脳が損傷を受けると脳は変化しなくなります。」
「半年以上経過するともう良くなりません。」

病院に入院している時にこの様に言われた経験はないでしょうか。

ひと昔前までは一度脳が損傷されると、その後変化はしないと考えられており、発症から6ヶ月経過すると脳卒中後の手足の機能は一定で変わらなくなると言われていました。

しかし、最近の脳科学の研究では、発症から6ヶ月以上経過しても脳内の手足に関わる脳領域は適切なリハビリをすることで変化することが報告されています。

今回は、脳卒中発症6ヶ月以上経過しても脳が変化するメカニズムについて解説します。

脳の可塑性:メカニズム

先ほど損傷した脳であっても6ヶ月以上経過しても変化すると言いましたが、損傷した脳領域の細胞が再生する訳ではありません。

一度損傷した脳細胞は再生することはなく、損傷した脳細胞の周りの細胞が損傷した脳領域まで拡大して脳内で再構築する働きを起こします。

この脳内で起こる脳細胞のネットワークの再構築を脳の可塑性(かそせい)といいます。

脳の可塑性については、サルに対する研究で報告されています。

人為的にサルの脳に梗塞を生じさせ、麻痺手に対して巧緻運動(細かな手指の動きの練習)を行った群と、何もせず自然回復の影響のみ受けた群で麻痺手の脳領域の変化を比較した。
結果として、麻痺手に対して巧緻運動を行った群において、手指・手関節、前腕における脳領域が明らかに広がったと報告されています。(1

この研究が報告されて以降にも脳の可塑性の研究はたくさん報告されてくる様になりました。

脳卒中後の機能予後と可塑性による可能性

2000年以前は脳卒中発症して6ヶ月経過した方は機能回復が止まるといわれ、リハビリテーションにおいても生活が自立してできる様な代償動作を獲得するリハビリがメインとなっていました。

現在は脳には可塑性があり適切なリハビリを行えば6ヶ月以上経過しても、機能は改善する可能性が示されています。

機能回復が止まるのはリハビリ内容が原因??

1991〜1993年の海外の研究で、特に脳卒中後の麻痺手の機能予後については、発症から11〜16週で機能回復が停止すると報告されていました。(2

また、日本の研究においても麻痺手の回復は発症から2〜3週間が最大で、6〜12週が限度と報告されていました。(3

上記の研究が行われていた時期のリハビリテーションは、可能性が低い機能回復よりも生活を自立させるための代償動作を獲得するためのリハビリテーションが行われていたことも、機能回復を妨げていた要因だと考えられています。

回復期以降のリハビリは【能力を向上するために戦略を変える時点】

発症から早期のリハビリにおいて、麻痺手の積極的なリハビリをした群と通常のリハビリをした群で比較した研究では積極的なリハビリをした群の方が麻痺手の機能改善幅が低値だったと報告されています。(4

それに比べ、回復期以降のリハビリにおいて、麻痺手の積極的なリハビリ群の方が通常のリハビリ群より優位に上肢機能の改善を認めたと報告されています。(5

このことから、発症から半年以上経過する時期は「麻痺手の動きは変わらない」という時期ではなく、『能力を向上するために戦略を変える』時期と言うことになります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

脳の可塑性が脳卒中後のリハビリにおいて重要な点になります。

今回はメカニズムを説明しましたが、従来のリハビリをしていても退院後のリハビリにおいて脳が変化することは少ないことを理解していただけたと思います。

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文献

  1. Nudo RJ.Milliken GW.JenkinsW.H,et al:Use-dependent alterations of movement representation in prinary motor cortex of adult squirrel monkeys.1996
  2. Jorgensen HS,Nakayama H,Raaschou HO,et al:Outcome and time course of recovery in stroke.Part1:Outcome.The Copenhagen Stroke Study.Arch Phys Med Rehabil 76.1995
  3. 三好正堂:脳卒中・片麻痺からの回復.1990
  4. Dromeric AW,Lang CE,Birkenmeier RL,et al:Very Early COnstrain-Induced Movement during Stroke Rehabilitation(VECTORS):a single-center RCT.2009
  5. Wolf SL,Winstein CJ,Miller JP,et al:Effect of constraint-induced movement therapy on upper extremity function 3 to 9months affter stroke:the EXCITE randomaized clinical trial.JAMA296.2006

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