麻痺手の機能改善と生活で使えるために重要なこと

脳梗塞 リハビリ

脳卒中後のリハビリにおいて最も重要なことは生活で使うことができることです。

特に麻痺手のリハビリにおいて、当事者の方からよく聞く言葉として、『リハビリの時はできるが生活では使えない』です。

Andrewsらは「訓練室で可能な行為」と「日常生活において可能な行為」は全く質が異なることを報告しています。(1

麻痺手のリハビリにおいては日常生活で使用できるか?といった観点がとても重要になるのです。

脳卒中後の上肢麻痺に対するリハビリテーションにおいて、最も重要視される部分は『行動』を変容することである

行動変容を導く!常識脳回復アプローチ 脳卒中上肢麻痺に対する基本戦略

今回は、麻痺手のリハビリについて生活で使える手にするための行動変容について解説していきます。

麻痺手の機能改善と生活で使える手は違う

「麻痺手が硬くならない様にストレッチしましょう」「麻痺手の筋力が落ちない様に筋トレしましょう」などリハビリスタッフから言われたことはありませんか?
そして、退院してから忠実にその言葉を守りながら筋トレやストレッチなどをずっと繰り返しでおこなっていませんか。

結論から言うと、筋トレやストレッチだけしていても麻痺手を生活で使うことにはつながりません。

ロボット療法に関する報告より、「ロボット療法で麻痺手の機能は改善するも、その機能は日常生活に影響を与えない」2)と言われています。

この様に筋トレやストレッチを繰り返し行っていても、機能(可動域や筋力)は維持・改善するかもしれないが生活で使える手にはならないと言うことです。

麻痺手を生活で使える様にするための行動変容

麻痺手を生活で使える手にするには、実生活の活動における麻痺手の使用行動が変わる(行動変容)様に計画的にアプローチしていく必要があります。

行動変容を導く要素は3つあります。

  1. 運動の量的アプローチ
  2. 課題指向型アプローチ
  3. 生活に転移させるための行動戦略

一つずつ確認していきます。

1.運動の量的なアプローチ

麻痺手を生活の中で使用できる手にするためには『運動量』が重要です。

人が子どもから大人になる発達過程において、手の使用頻度が増えれば増えるほど手の発達幅が大きくなると言われています。
脳卒中後の脳における手の機能を再構築する際にも、発達過程と同様で練習や生活での『運動量』は重要となります。

脳卒中当事者の方を対象として研究によると、回復期以降(退院後の方)で1日3時間の練習群よりも、1日6時間の練習群のほうが生活での使用頻度と質(使いやすさ)に良好な結果を残した(3と報告されています。

このことからも、運動の量的アプローチをいかに確保するかが重要になります。

課題指向型アプローチ

課題指向型アプローチとは、対象者が麻痺手を主体的に使用し、麻痺手の新たな運動スキルを獲得していくアプローチ方法です。

実際の生活環境に関連する課題を、対象者自身が主体的に考え解決し、次のステップの課題へ進むといった過程を計画的に進めていくアプローチ方法となります。
(例:机のものを取る課題に対して現在の上肢機能だけではできない場合、姿勢を変えたり、環境自体を変更したりすることによって独力で行える様に調整する。)

脳卒中モデルラットを用いて環境の違いが機能回復に与える影響について、通常の飼育を受けたラットに比べ、より複雑な飼育環境におかれたラットの方が機能改善が得られた(4と報告されています。

また、脳卒中患者の麻痺手に対して課題指向型アプローチを実施した群のほうが、通常のリハビリテーションを実施した群のほうが上肢の改善が大きかった(5と報告されています。

この様に実際の生活場面で細かく設定してリハビリを進めていくことが重要になります。

生活に転移させるための行動心理

生活に転移させるための当事者本人の行動心理で重要になることは「目標」と「報酬」です。

人はなぜ行動するかというと「やりたいこと(目標)」が「できると思える(報酬)」からです。

目標が「発症前の状態に戻る」など漠然と明確でない場合、リハビリをしても目標達成できないためモチベーションも落ちますね。

なので目標は1回のリハビリで達成可能な小さな目標を細かくたくさん設定します。

その小さな目標は「家族との食事の時に麻痺手を使ってコップを持ちお茶を飲む」など大きな目標から逆算して立てていきます。

小さな目標が達成できると「私はできる」と思えて、次はもっと高い目標が設定できます。

この様に行動心理から「やりたいこと」が「できると思える」ことが重要になります。

まとめ

いかがでしたか?

生活場面で麻痺手を使える手にするための行動変容の3つの要素は

  1. 運動の量的アプローチ(量)
  2. 課題指向型アプローチ(環境:質)
  3. 生活に転移させるための行動心理(目標と報酬)

この3つを意識しながら計画的にリハビリを進めることで生活の中で使える麻痺手に近づく可能性があります。

今まで筋トレやストレッチ、促通訓練をしていて麻痺手の機能(可動域や筋力)は改善しているけど、生活の中で使えないという方はリハビリ方法を一度考える必要があります。

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文献

  1. Andrews K,Stewart J:Srroke recovery:he can but does he?Rheumatol Rehabil18.1979
  2. Mehrholz J, Platz T, Kugler J,et al:Electromechanical and robot-assisted arm training for inproving arm function and activities of daily living after stroke.2008
  3. Sterr A,Elbert T,Berthold I,et al:Longer versus shorter daily constraint-induced movement therapy of chronic hemiparesis:an exploratory study.2002
  4. Will B,Galani R,Kelche C,et al:Recovery from brain injury in animal:relative efficacy of environmental enrichment,physical exercise or formal training(1990-2002).2004
  5. Nelles G,Jentzen W,Jueptner M,et al:Arm training induced brain plasticity in stroke studied with serial positron emission tomography.2001

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