
脳卒中後の立位バランスや歩行の改善をサポートするものとして下肢装具があります。
入院中のリハビリ現場もですが、退院後のリハビリについても「回復期リハビリテーション終了後の慢性期脳卒中患者に対して、筋力、体力、歩行能力などを維持・向上させることが勧められる(グレードA)」1)と推奨されています。
今回は脳卒中後の下肢装具について種類や体への作用・適応、装具を使うことでの脳への変化を解説していきます。
装具の種類
脳卒中後の下肢装具には大きく分けて2種類あります。
- 長下肢装具(KAFO)
- 短下肢装具(AFO)
長下肢装具(KAFO)
大腿部から足底までの構造で、膝関節と足関節の動きをコントロールし、立位の安定、免荷目的で使用されます。
脳卒中後のリハビリ現場では主に、急性期〜回復期(発症初期〜中期)で早期離床や麻痺足への荷重量の増加目的で使用されます。
短下肢装具(AFO)
下腿部から足底までの構造で、足関節の動きを制限・制動し、立位・歩行の安定性、動揺防止、拘縮予防目的で使用されます。
脳卒中後のリハビリ現場では、急性期〜回復期病院でのリハビリ場面や退院される際に本人にあった装具として作成され、在宅生活で使用されます。
種類としては、『金属支柱型』、『シューホン型(オルトップ含む)』、『タマラック型』、『ゲートソリューション』などさまざまな種類があります。
下肢装具の体への作用
下肢装具は脳卒中後の異常歩行(内反、膝折れ、反張膝、引っかかりetc)による立脚期の安定性の低下、遊脚期のクリアランスの低下の改善を目的に使用されます。
では、なぜ脳卒中後麻痺により異常歩行が出現するかを考えていきます。
正常歩行と異常歩行
原因として、麻痺のより足関節の機能を使えないことによる麻痺足の支え(立脚期)があります。
歩行時の正常な足の動き・作用は、①踵から接地(足関節背屈位)②踵から足裏全体接地(足関節中間位)③足裏全体からつま先接地(足関節底屈位〜MP関節伸展)となります。

麻痺により反張膝が出ている方でいうと①足裏全面接地(足関節中間位〜底屈位)②足裏全面接地(足関節底屈位)③足裏全面接地〜つま先接地(足関節底屈位〜中間位)と①から踵接地できていないことがわかります。

このことから、脳卒中後の異常歩行に共通する歩き方の課題として支え初めの踵接地ができないことが考えられます。
異常歩行に対する装具の役割
異常歩行に対する装具の役割は、支え初めの踵接地を作ることがとても重要になります。
短下肢装具は足関節を制動(もしくは制限)する機能が付いています。
多くの方が使用されているタマラック型短下肢装具では足関節部分に継ぎ手がついており、足関節底屈への制動、背屈方向へはフリーで動くような設定になっています。
足関節底屈制動によって、①の支え初めの踵接地がしやすくなります。

①の踵接地ができることで②、③と足関節の機能が生まれやすくなり、異常歩行の影響を軽減して歩行を行うことができます。
片麻痺の歩行に対して、装具は支え初めの踵接地を引き出すための補助的な役割をしている。
装具による踵接地を行うことで、立脚中期〜後期にかけての下肢の筋作用を引き出しやすくなる。
下肢装具を使用することで起こる脳への変化
ここからは、下肢装具を使用して起こる脳内の変化についてお伝えします。
結論から言うと、下肢装具を使用することで過剰な脳活動を抑えられる(2と言われています。
短下肢装具使用の有無によるfNIRS※装置を用いての大脳皮質層血流動態研究では、装具無しでは装具歩行に比べ、病巣、両側の脳内の活動が優位に増加したと報告されています。
※脳の活動を継続し可視化(イメージング)する装置
個人によって異なりますが、装具無しで内反や反張膝が出現している際に、脳内では過剰な活動が起こっていると考えられています。
まとめ
いかがでしたか?
脳卒中後に装具を使うべきか、使わないべきかと悩んでいる方もおられると思います。
装具については上記のように脳卒中後の異常歩行を改善するための補助手段として考えられています。
なので、ずっと使うべきなのかと言われるとそうではありません。現在の各自個人の体の状態に合わせた装具を適切に使用することが大切です。
そして、装具の種類や役割を当事者本人やご家族様も知っておくことがとても大切です。
わからない点や相談したいことがありましたらお気軽にお問合せください。
文献
- 脳卒中治療ガイドライン2015
- 脳卒中片麻痺に対する装具療法と今後の展望:日本義肢装具学会誌.Vol.35 No.2 2019
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