脳卒中後の歩行の補助具として代表なものは下肢装具です。
下肢装具で、一般的に処方されるものとしてプラスチック型タマラック型短下肢装具ですが、近年脳卒中後の歩行再建のための装具として注目されているものとしてゲートソリューションがあります。
この記事では、脳卒中後の下肢装具であるゲートソリューションについて適応や機能についてまとめています。
なお、脳卒中後の歩行に関わる下肢装具についての概論についてはこちらからご覧ください。
ゲートソリューションとは?
ゲートソリューションとは、脳卒中後の片麻痺の歩行再建のために作成されたPasific supply会社の商品です。
従来の装具は「転ばないため」に処方されるものがほとんどであるが、ゲートソリューションは「歩きやすくなるため」の装具として開発されています。
100名以上の片麻痺者の歩行分析に基づいて開発され、歩行中の下肢の動きをコントロールして、より自然に歩くことを目的として作成された新しい概念の装具です。
https://www.p-supply.co.jp/products/375
適応について
ゲートソリューションは脳卒中片麻痺の方への装具であるが、麻痺の状態によって適応は慎重にみていく必要があります。
- 足関節底屈および内反筋群の痙性が軽度から中程度の方
- 著しい足部の変形や拘縮がない方
- 立脚相の著しい膝折れや反張膝がない方
痙性による麻痺が強い方や痙性麻痺に伴い膝折れや反張膝の症状が出ているとゲートソリューションの効果が得られにくいということになります。
痙性麻痺が強い方はより強固な制動ができる、タマラック短下肢装具や金属支柱付き装具などが適応になります。
効果について
ゲートソリューションは「歩きやすくなるため」に開発された装具であり、大きく3つの機能があると言われています。
- 底屈制動(麻痺足が地面に接地し始めから:立脚初期)
- 背屈フリー(立脚中の動きを妨げない:立脚中期以降)
- 背屈補助(麻痺足が地面から離れる時:遊脚期)

ゲートソリューションの2つの目的
開発者である理学療法士の山本澄子先生によると、ゲートソリューションには2つの目的があります。
- 装具を外すための治療
- 日常生活に溶け込むデザイン
1.装具を外すための治療
従来の装具では「転倒しないための装具」といったイメージが強くありますが、ゲートソリューションでは「歩きやすさを獲得する装具」といった目的で使用されています。
歩きやすさについては上記で説明したような効果でもあるように、底屈制動が重要になってきます。
底屈制動により、踵接地から重心を前に移動させるための本来の身体運動であるヒールロッカー(踵接地し下腿三頭筋の遠心性収縮により下腿が前に移動する機能)機能を補助することができます。
もちろん、装具だけ変えても使用している当人の歩き方や意識の仕方が適切でなければ効果は出にくいですが、ゲートソリューションは、ヒールロッカー機能を補助することで「楽な歩きやすさ」を追求した装具といえます。
そして、効率的に歩き方を再建できることで左右対称性やバランスの安定性が向上し、結果的に疲れにくい、歩行速度が速くなるといった効果も得られる可能性があります。
2.日常生活に溶け込むデザイン
ゲートソリューションはデザイン性としても評価されています。
従来の装具は下腿後面をプラスチックで覆われたり、足関節にバネ式の大きな継手が突き出ていたりとゴツいイメージがあります。
ゲートソリューションでは油圧式バンパーを使用することで継ぎ手部分も小さくなっており、下腿後面を覆っている範囲も少なく非常にコンパクトなデザインになっています。
また、色も豊富で靴や服装にも合いやすいデザインとなり「おしゃれ」を楽しむこともできると言われています。

価格
タマラック型短下肢装具に比べると3〜4倍の値段になり、価格帯としては高価となります。
詳細についてはPasific supply会社のHPより参照してください。
まとめ
脳卒中後の歩行再建に向けた下肢装具であるゲートソリューションについてまとめてみました。
あくまで装具はリハビリの補助として使用する道具ではありますが、適切に使用できることでリハビリ効果を最大限に発揮できる可能性があります。
今回の記事でわからないことがありましたら、いつでもお気軽にお問い合わせやコメントをください。
参考
- 山本澄子 月城慶一:歩行分析による義肢装具の適応・調整の評価.2006
- 山本澄子:バイオメカニクスから見た片麻痺患者の短下肢装具と運動療法.2012
脳カラ公式LINEへの登録お願い致します。
公式LINEに登録するとリハビリに関する限定情報を受け取ることができます。
また、個別相談もしているので、是非ご登録下さい。
コメント