麻痺手のリハビリでの間違い〜脳は使わない事を学習する〜

脳梗塞 リハビリ

脳卒中後の麻痺手のリハビリで『利き手交換』を積極的にした方も多いと思います。

「退院に向けて生活が自立しないといけないから」と生活を第一に考える事も非常にわかります。
しかし、生活に戻ると麻痺手が治らないからリハビリをずっと続けている方もいます。

今回は麻痺手の機能回復に関わる、入院時や退院後のリハビリで『利き手交換』によって起こる脳の変化について解説していきます。

脳は左右半球間で抑制し合っている

人間の脳は真ん中に溝(脳梁)があり、左右半球に分かれています。

そして、左右の脳は感覚情報をやり取りしながら、相互に抑制し合うことで、正常な脳活動を行うことができます。

この左右半球のバランスが、何かしらの脳の障害によって崩れることでさまざまな不具合が出現します。

脳損傷による脳の不具合
  • 損傷側の脳活動低下
  • 非損傷側の脳活動興奮
  • 左右半球間での情報連絡低下

脳の不具合の中で特に『損傷側の脳活動低下』が麻痺手の機能回復にとても影響してくるのです。

使わないことを脳が学習する:学習性不使用

脳は常に学習する能力を持っています。環境の違いや動かす量によって脳が変化することが証明されていますが、逆に麻痺手を使わないことでも脳は変化するのです。

これを学習性不使用といい、特に麻痺手の研究でよく報告されています。

健常人が10時間にわたり上肢にミトンをつけて抑制し、不使用の状況を作ることで、抑制していた側の脳半球の活動低下が認められています。(1

脳卒中で麻痺を呈した対象者において、非損傷側半球の運動関連領域から損傷側半球領野に対する抑制反応が高いほど、麻痺手の機能は低かったと報告があります。(2

このことから、麻痺手の不使用により非損傷側から損傷側関連領域への半球間抑制が強くなることによって、麻痺手の機能回復の学習に影響を与える可能性があります。

麻痺手を使用することで半球間抑制が是正される

麻痺手を使わないことで起こる学習性不使用に対して、有効な手段は損傷側もしくは非損傷側の脳へ直接刺激を加える事と、麻痺手を積極的に使うことです。

半球間抑制の是正手段
  • 非侵襲刺激を用いた方法(r-TMS、tDCS)
  • 麻痺手の集中練習

生活期の脳卒中片麻痺を呈した対象者において、2週間の麻痺手を用いリハビリ(CI療法)を実施したところ、麻痺手の機能の向上に加え、損傷側の運動誘発電位(MEP)の改善を認めたと報告しています。3)

また、1日2時間、週5回、3週間のプロトコルで生活期の脳卒中対象者に対して、麻痺手を使用したリハビリを実施したところ、損傷側半球から非損傷側半球への抑制反応が麻痺手の機能向上に関連して増加したと報告があります。(4

このことからも、生活期においても麻痺手を積極的に使用することで、脳卒中により生じていた半球間の異常な抑制関係による学習性不使用を改善できると考えられます。

ただ動かすだけのリハビリでは脳の変化は起きない

ここまでで麻痺手を積極的に使うことが大切ということがわかっていただけたかと思います。

しかし、ここで勘違いして欲しくないことは『麻痺手を使う=マッサージやストレッチでも良いんじゃないか』と思っている方は大間違いです‼︎

先ほど紹介した研究では、生活場面で適切な場面で適切な量の運動をおこなっています。
ただ動かすだけではなく、生活に関わる動作や動きを課題として取り入れ、無理な運動はせず自分に合ったリハビリ内容をおこなっています。

このように生活に関わる運動を段階的にすることが脳の変化を導くためには大切になります。

まとめ

いかがでしたか?

脳卒中後の麻痺手の改善で悩んでいる方も多いと思います。

生活で使えないから、良い方の手ばかり使っている。
リハビリはストレッチやマッサージだけで終わらせている。

このような方はいつまで経っても脳の変化は起きません。

脳の変化を起こし使わないことを脳に学習させるためには、適切な環境、適切な量で麻痺手を使うことが重要になります。

麻痺手のリハビリについてどうすれば良いかわからないという方も多いと思いますが、どうすれば脳が変化して麻痺手の機能が良くなるのかを”脳カラ”理解できると間違いなくあなたのリハビリは前進します。

脳カラはわかるまで徹底的に説明します。置いていきません。

安心してご相談ください。

文献

  1. Avanzino L,Bassolino M,Pozzo T,et al:Use-dependent hemispheric balance.2011
  2. Grefkes C,Nowak DA,Eickhoff SB,et al:Cortical connectivity after subcortical stroke assessed with functional magnetic resonance imaging.2008
  3. Tarkka IM Kononen M,Pikanen K,et al:Alterations in cortical excitability in chronic stroke after constraint-induced movement therapy.2008
  4. James GA,Lu ZL,VanMeter JW,et al:Changes in resting state effective connectivity in the motor network following rehabilitation of upper extremity poststroke paresis.2009

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