右半球損傷と左半球損傷の症状の違い

左右半球の違い脳梗塞 リハビリ

脳卒中後の日常生活に支障をきたす症状として、高次脳機能障害があります。

高次脳機能障害の特徴は、脳の右半球と左半球どちらの損傷かによって症状が違うことです。

今回は、右半球損傷と左半球損傷による高次脳機能障害について概要を解説していきます。

高次脳機能障害について

『高次』とは大脳皮質のことを指し、脳卒中により大脳皮質内の神経ネットワークに不具合が生じた結果起こる脳の機能障害になります。

高次脳機能障害の例
  • 家族から言われたことが記憶できなくなり、すぐ忘れてしまう。
  • 歩きながら話をするなど2つのことを同時に行えなくなった。
  • 言葉がうまく話せない、相手の話を理解できない。
  • 麻痺はないのに服を着るときにボタンの付け方がわからなくなり服がうまく着れない etc

上記のように、高次脳機能障害によって脳卒中前には当たり前ようにできていたことができなくなります。

高次脳機能障害の種類

脳卒中後に生じる高次脳機能障害の種類は多岐にわたります。 

まずはどのような種類があるかを把握していきましょう。

  1. 失語症
  2. 失行症
  3. 失認症
  4. 記憶障害
  5. 遂行機能障害
  6. 注意障害
  7. 社会的行動障害

1.失語症

口・舌・咽頭などの構音器官の運動麻痺や感覚麻痺がないにも関わらず、「話す」「聞く」「読む」「書く」といった言語機能が障害される。

発語ができなくなったり、流暢に話せない『運動性失語:ブローカ性失語』、他者の話を言葉として理解できなくなる『感覚性失語:ウェルニッケ性失語』に分けられます。

2.失行症

運動麻痺がないにも関わらず、物体の操作や使用がうまくできなくなったり、自身手足の動きが適切に行えなくなります。

物体操作や使用の障害に関わる「観念失行」、自身の手足の動きに関わる「観念運動失行」があります。

3.失認症

感覚麻痺がないにも関わらず物体や空間の認識ができなくなります。

目の機能(視覚機能)は保たれているが、空間の半分や物体の半分が認識できなくなる「半側空間無視」があります。

4.記憶障害

さっき言われたことをすぐ忘れる「短期記憶障害」、昔のご自身の思い出を忘れてしまう「長期記憶障害」があります。

脳卒中後は特に短期的な記憶(ワーキングメモリ)が低下することにより日常生活上で支障をきたす場合が多くあります。

5.遂行機能障害

自分で計画を立ててものごとを実行することができない、人に指示してもらわないと何もできないなど計画的に行動を実行する機能の低下により日常生活に支障をきたす場合があります。

6.注意障害

色々なものに反応しやすくなったり、疲れやすかったり、途中で物事を投げ出してしまうなど、脳卒中前は気にならなかったことが気になったり、日常生活に支障をきたします。

注意機能の低下には「分配性注意の低下」「選択性注意の低下」「持続性注意の低下」「転換性注意の低下」があります。

7.社会的行動障害

気性が激しくなり、暴言や暴力を振るうなど自己中心的性格の変化が起こることもあります。

右半球損傷と左半球損傷の高次脳機能障害

右半球損傷で生じる特徴的な症状は半側空間無視、左半球損傷で生じる特徴的な症状は失行症になります。それぞれ以下に解説していきます。

右半球損傷の特徴:半側空間無視

半側空間無視とは、視野障害などはないため視覚情報は入っているが脳が空間や身体における半分が存在的に認識することができなくなっている状態のことを言います。

日常生活上の徴候
  • 時計を読むことが難しい
  • 身体の左側の髭剃りや着替えが難しく、化粧を顔の片側しかしない
  • 皿の左側半分を食べ残す
  • 文字を書くときに左側を書き落とす
  • 歩行時に左側の壁やドアにぶつかる
  • 左に家族や友人がいることに気がつかない etc
食事の左半分を残してしまう
空間の半分が認識できなくなる

特徴的なのは、左半身や空間については意識に上がらず、左半分が意識できないことにすら気がついていない(興味を示していない)ことが報告されています。

左半球損傷の特徴:失行症

失行症とは、運動麻痺がないのに行為がうまくできないことを言います。

失行症の種類
  1. 運動失行
  2. 観念運動失行
  3. 観念失行
  4. 脳梁失行
運動失行

肢節運動失行とも呼ばれ「運動の拙劣さ(不器用さ)」があります。開眼時と閉眼時で手指による物体操作能力に著名な差が出ることが特徴となります。

例)開眼ではコップを持つ、メガネを外す、ボタンを止めるなどの行為が問題なく行えるが、閉眼になると『手にした物が何か全くわからない。』
コップを持つ、メガネを外す、ボタンを止めるといった行為ができなくなる

観念運動失行

行為の乖離:自発的な行為は保たれているが、他者から行為を命じられるとできない。

人の動作の真似や指示されたことがうまくできなくなる症状。模倣障害(ジェスチャー、パントマイム)ともいわれています。

★模倣障害(ジェスチャー、パントマイム)
「意味のないジェスチャー」、「意味のあるジェスチャー」、「道具使用のパントマイム」の評価を行います。

Gesture imitationの評価表(右の文章は誤反応の記載例)

重要なのは、模倣ができるかではなく、誤反応(どういう動きになっていたのか:錯行為)を知ること。

観念失行

行為の解体が特徴で、個々の運動はできるが複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害される。

特徴:『道具の使用障害』

上記のような日常生活上で使用する道具についての理解はあるが使用する際に「どのように使って良いのかがわからない」「手順が間違っている」という動作系列の錯行為が起こる。

例)マイクを反対に持つ/ヘアブラシの柄の部分で髪をとかす/ズボンを履き方がわからなくなり/手からズボンを履こうとする 

観念失行:道具の使い方や手順がわからなくなる
脳梁失行

行為に対する自己自体に解離が認められる。手が自分の意思とは関係なく行為してしまう。

特徴:他人の手徴候

まとめ

脳卒中後の目に見えない症状である、高次脳機能障害について概要をまとめました。

脳卒中当事者の皆さんは、原因のよくわからない症状群にただ驚き、困っている状況です。

今回の記事で、自分の症状や状態に気づき、自分で問題意識を持ってリハビリに向き合うことのきっかけになれば嬉しいです。

わからないことが多いと思いますし、全てを自分で理解することは難しいのでいつでもお気軽にお問合せを頂けますと納得いくまでお話をさせていただきます。

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