脳梗塞後遺症によるお悩みを持っている方でリハビリをどの様にとらえていますか。
私はリハビリは学習することと考えています。
具体的には、体の動きは脳からの運動指令によって体が意図した動きを行います。
・勉強するために学校まで歩いていく
・目玉焼きに醤油をかけて食べるために、テーブルの上の醤油に手を伸ばす
目的に対して、脳が「歩く」や「手を伸ばす」ことを学習しているから行える動きになります。
そして、脳が体の動きを学習するためにはただ動かすだけでなく、自分に合ったリハビリのやり方(学び方)や「なぜできたのか?できないのか?」と分析する力【メタ認知】が重要になります。
今回は、測定できないが非常に重要な【メタ認知】について説明していきます。
※チェック項目のあるので今の自分を確認してみてください。
メタ認知とは?
メタ認知とは、自分自身に関して客観的な視点から観察する能力のことを言います。
リハビリ場面だけでなく、教育現場や人材育成、仕事や対人関係などの場面でも話題になっています。
「自分ができない事をするためにはどうしたらいいのか?」
この様に、課題や壁にぶつかったときに自分自身で課題に対しての答えを出そうとする考え方を持つことができる事を言います。
メタ認知を構成する4つの要素
メタ認知を提唱したジョン・H・フラベルによると、「メタ認知的知識」「メタ認知的経験」「認知的目標」「認知的行為」の4つの要素から構成されているといいます。
メタ認知的知識とメタ認知的経験を持つことで自信への理解が深まり、メタ認知的目標とメタ認知的行為が理解できると自分の持つ課題を自力で解決できる様になります。
メタ認知的知識
メタ認知(客観的に自分を観察する)材料になる知識のことを言います。
具体的には、「課題」「目標」「行為」「経験」のことを表します。
例)脳梗塞リハビリ現場において、「膝折れが杖がないと歩くのが怖い」というのは課題、「杖なしで歩きたい」という思いが目標になります。
そして、「午前中の訪問リハビリで杖なしで歩けなかった」というのは行為と経験にあたります。
メタ認知的経験
意識的・感情的な認知ができた経験のことをいいます。
例)訪問リハビリ場面で、膝折れが出そうで杖なく歩けなかった経験から「私は膝折れが出そうで怖くて、杖なしではまだ歩けない」と認知した瞬間(メタ認知的経験)のことをいいます。
認知的目標
目標の先にある目的のことをいいます。
例)杖なしで歩くことが目標となります。そして、杖なしで歩けることによって「家族と買い物に行く」「友人と旅行に行く」など動機のことを目的となります。
メタ認知的行為
目標を達成するために行われる行為のことをいいます。
例)杖なしで歩くための行為がメタ認知的行為にあたります。「自主リハビリを徹底する」「自分がなぜ杖なしで歩けないかを分析して適切なリハビリ方法を探す」などの方法や行為が考えられます。
『メタ認知』度合いチェック
上記までの説明で自分はメタ認知できているんだろうか?と疑問に感じた方も多いと思います。
ここでは、メタ認知の高い人の特徴、低い人の特徴を挙げます。
自分自身の現状をチェックしていきましょう。
メタ認知が高い人の特徴
☑️主観と客観を使い分けられる
⇨歩くリハビリ場面で「足を振り出すときに、麻痺足がいい方の足に比べ重く感じます(主観)」、「ビデオなどで客観的に見たらそんなに麻痺足を持ち上げていたりしていないことは理解している(客観)」など自分の発言が主観なのか、客観なのか判断でき伝えることができるか?です。
☑️自分の行動の意図を説明できる
⇨自分がなぜこのリハビリをしているのか?この自主練習をしているのか?を説明できます。
「私がステップ練習をしている理由は、麻痺足の支えが頼りないのでしっかり体重を感じながら支えられる様にこの練習をしています」といった説明ができます。
☑️自分の長所と短所がわかる
⇨自分が何ができて、何ができないのかを適切に評価して把握している。
「私は早く歩くと麻痺足の緊張が高くなって足が重くなるけど、ゆっくり意識して歩けば緊張が高まらずに楽に歩けます。」
メタ認知が低い人の特徴
☑️思い込みが強い
⇨「歩けないのは筋力が弱いから」「麻痺があるから緊張が高まるから」など極端な思考になります。
☑️感情にまかせた行動
☑️相手(セラピストや家族)の行動や意図を汲み取るのが苦手
⇨リハビリ場面で言えば、セラピストが教えてくれたことやリハビリ内容の意図や目的を理解しないままリハビリを続けている場合が当てはまります。コミュニケーションがうまく取れていないことも要因となります。
メタ認知が低い方は長所と短所を明確に白できないため、自分の長所を生かした成功体験を積んだり短所をカバーする能力を身につけるための試行錯誤ができず、成長意欲が低くなる傾向になります。
メタ認知を育むことでのメリット・デメリットについて
メリットとして、自分で自分の体に対する問題が見つかり解決する手立てがわかり、結果的にリハビリ成果や変化が継続して出やすくなります。
- 課題が自分で見つけられる
- 感情のコントロールができる
- 話の説得力が増す(相手に伝わる)
- 問題解決能力が高まる
メリットと同時にデメリットになる方もいます。
デメリットについては必ず発生するものではありません。
- 常に考えるため疲れる
- プレッシャーに感じやすくなる
- 本来の自分の力を発揮できなくなる場合がある
このようなデメリットの傾向が強くなった際には、信頼できる家族や友人・仲間に話をしたり、リラックスする時間をとって休憩することも大切です。
メタ認知を鍛えよう〜トレーニング方法〜
メタ認知を鍛えるために一般的に有効と言われている方法を以下にあげます。
- マインドフルネス(瞑想)
- セルフモニタリング
- ライティングセラピー
- 第3者の観察してもらう(リハビリスタッフ)
1.マインドフルネス(瞑想)
マインドフルネスのトレーニング方法の中の瞑想は、自分の思考や状態に集中することができ、今この瞬間を客観的に感じることができます。
瞑想方法・手順は①姿勢を正す ②呼吸を意識する ③心を整えるこの3つ手順で行います。
②の呼吸は「鼻から吸い、口から吐く(息を吸う:息を吐く=1:2)」を意識します。
③の心を整えるでは、心拍や風の音、温度、明るさなどその瞬間を感じることに集中することで、集中している自分を捉えることができます。
2.セルフモニタリング
セルフモニタリングは、自分自身を観察することになります。自分自身が意識せずおこなっている行動や思考に対する気づきを得る方法です。
リハビリ場面を例に挙げて、「今の状況」「考え」「気分」「行動」「体の反応」を書き起こします。
例)脳梗塞後の訪問リハビリで杖なし歩行練習をした直後のセルフモニタリング
・今の状況:杖なしで歩けない
・考え:麻痺足で支えようとすると膝折れが起こりそうで怖くて杖に頼ってしまう。なんどやっても怖さが消えないので悩んでいる。
・気分:いつまで経っても変わらないので諦めかけている
・行動:筋力が弱いと思っているから自主練習でも歩く練習をしている
・体の反応:余計緊張が固まってきて歩きにくい
麻痺足の膝折れが怖いため杖なしで歩けないことに気が付き、膝折れが起こらないための解決策を検討することができる。筋力トレーニングばかりしていてもよくなっていないことに気が付き、膝折れが起こる原因は筋力以外にある可能性があることに気が付くことができる。
この様に書き出すことで、現状を把握でき解決策のヒントが見つかる可能性があります。
3.ライティングセラピー
自分の抱えている悩みや不安といったネガティブな思考や感情を紙に書き出すことで可視化し、客観的に捉えられる様にする方法です。
【やり方】
紙とペンを用意して、10分〜20分で自分が抱えている感情や思考を書き続けるだけです。
頭に浮かんだことはすべて書き出すことがポイントとなります。
4.第3者に観察してもらう
第3者から自分の動きや生活、性格などをみてもらい話してもらうことで、自分自身の思考や癖や習慣など気づきにくいところに気づけるきっかけになる可能性があります。
まとめ
いかがでしたか。
リハビリとは学習であり、メタ認知を知ったり、学んで身につけることで自分自身で課題を見つけ解決できる力をつけることができます。
リハビリ=セラピストがいないとできないと思っている方も多いと思いますが、退院後のリハビリはセラピストがいない時間の方が圧倒的に長く、その時間をどう過ごせるかが鍵となっています。
この記事で少しでも気づきや感じるものがあった方は、まだまだ成長できる可能性があります。
私自身『一人でできるリハビリ』を身につけてもらうための自己管理を学んでもらうことを第一に考えてリハビリを行っています。
今の受け身のリハビリから卒業したい、自分で解決できる力を身につけたいという方は、公式LINEからメッセージをください。
コメント
こんにちは。
メタ認知=「動きのコツ」の考え方ですね。
確かに、回復期の病棟では、考え無しでも、日々3時間のリハビリがあり、退院する頃には良くなっているのだろうと、勝手に思っていました。
しかし、退院すると、一人で行動することを家族にとても心配され(小脳系の後後遺症が出て、ふらつき、加えて眼振もありましたので)、自然に一人で活動する事も少なくなって行きました。
感覚が少しでもあれば良かったのですが、それも乏しく、途方に暮れていた時に動きのコツの動画やライブに出会い、現在に至ります。
毎回のテレビ電話でのリハビリは、まさに、①どのようなことが良い結果となったのか、②どこが問題なのか、③どんな所が癖なのか、④リハビリに対しての真剣さはどうか等、リハビリに対しての向き合い方や次のリハビリまでに気を付けなければならない箇所を、自分で答えを導き出さねばならず(勿論お助けしていただきながら)、とにかく動きや感じていることを自分の言葉で表現することに四苦八苦しています。
しかし、ライブでいつも見せて頂く、階段を一段ずつ登っているんだと感じます。
未来はどのようになっているかわかりませんが、脳梗塞を発症してしまった人生を受け入れて、リハビを続けていこうと思います。
毎回、有益な情報をありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
動きのコツの考え方というよりも、リハビリテーションの考え方だと思っています。
人間が元々持っている、自分で解決できる力がまさにメタ認知だと思っています。
しかし、メタ認知は環境や関わる方によって変化量が変わってくるものなのできっかけになってもらえていたら嬉しいです。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
自分の長所と短所は大事だと思います。小脳出血後遺障害でバランスをとれるのは、現在はゆっくり平坦な所を4点杖を使うことです。ひとりdeリハでも気づきましたが、右麻痺足に体重をチャントかける事、麻痺足幅を大きくしない事、が私の長所であり短所です。これが出来たら次の段階へ進むようします〜そうすると、腕や手の指も動きやすいと考えます。
ライティングセラピーは大切だと思います。
私は現代詩同人誌へ出す詩がかけたらスッキリします。これから訓練内容を書いて記録しておきます(^。^)
自分のことを客観的に見ることはなかなか難しいことですが見れることで視野は格段と広がります。
和田さんはご自身の長所がわかっておられますね。
その結果、次はこの内容、次はこれをチャレンジなどどんどん前に進めるのだと思いますよ。
ライティングセラピーも自分を見つめ直すためには重要ですね。字に書くことで曖昧になっていた頭を整理することにもつながるので新たな発見がありますね。
是非つづけてみてください 。