脳卒中の方とのリハビリで目標として多い日常生活場面は『調理』があります。
特に女性の方(最近では男性の方も希望はあります)とご一緒する際に目標としてリハビリを行うことが多くあります。
今回は、脳卒中後の日常生活場面における調理について考えていきます。

調理とは作るだけではない‼︎
脳卒中後、特に入院中のリハビリで調理練習をされる方は多いと思います。
リハビリ内容の多くが食材を切る、フライパンで炒める、鍋の中を混ぜるなど調理中のリハビリがメインになっています。
もちろん、片麻痺によって動かしにくい体で「食材が切れるか?」「フライパンが持てるか?」などを不安や心配されるのが当然だからです。
しかし、「日常生活の中で調理場面でどんなことに悩みますか?」と当事者の方に聞くと、意外にも調理中のことだけでなく、調理前(準備)や調理後(配膳や盛り付け)などが難しいなどの声も多く聞きます。
買い物 環境整備 | 金銭管理・買い物リスト・食材選定・キッチンの整理・調理器具の準備、選定 など |
献立 | 何を作るか?・誰に作るか?・何人分作るか?・その日だけの料理なのか?・栄養バランス など |
食材の準備 | 包丁の選択、使用・食材を洗う・食材を切る・皮むき(ピーラー?包丁?)・調味料の準備 など |
調理 | エプロンの着衣・鍋の使用・火加減の管理・十分な加熱・安全への配慮・換気 など |
盛り付け | 食器の準備・見栄えのいい盛り付け・適量の配分 など |
配膳・運搬 | 食卓へ運搬・箸の配置・献立に応じた食器(取り皿・スプーン等)の準備 など |
食事 | 茶碗を持つ・箸やスプーンでご飯を食べれる・食事マナー・コミュニケーション など |
後片付け | 食器の運搬・洗浄・乾燥・収納・キッチンの清掃 など |
参考・引用:セラピストプラス 手段的日常生活動作(IADL)に…料理の作業特性とその活用 より
このように考えると、数ある家事動作の中でも難易度がとても高く、リハビリで〝調理″を考える際には上記のように細かく設定をする必要があると言えます。

調理が与える脳への影響
調理をしている方は当たり前に感じることだと思いますが、調理は準備・段取りが重要になります。
調理過程においても身体面だけでなく頭(脳機能)をフル活用しており、特に前頭葉という「計画・判断・行動など遂行や意思決定」に関わる脳部位を活用します。

つまり、調理は身体面のリハビリだけでなく、脳機能にも影響を与えています。
調理が与える身体への影響
調理は身体面と脳への影響を与える日常生活動作であります。
リハビリの観点から見ても調理はやり方次第で麻痺手への良い影響を与えます。
麻痺手のリハビリにおいて重要なことは「麻痺手を使わないことを学習する:学習性不使用」を防ぐことです。つまり積極的に使っていくことは重要な観点です。
しかし、退院後のリハビリは週に1〜2回で1回40分程度で、リハビリ時間以外でどれだけ頑張って使ってもリハビリ時間以外で使っていなければ意味がありません。
なので、調理など麻痺手を使う必要がある状況で、使える範囲で使用していくことは身体面のリハビリにおいても重要なことになります。
片麻痺当事者と考える″調理″について
ここからは、片麻痺当事者で自身のYouTubeチャンネル『片麻痺KIRI♪room』で調理などのリハビリ風景を発信されているKIRIさんとの会話の一部をご紹介します。
KIRIさんは仕事として調理人を行っていました。脳梗塞後の左片麻痺を呈している、現在でも料理を仕事にしたいというお気持ちでリハビリに励んでおられます。
脳卒中後の料理をする上での工夫や意識していることを聞いています。
野菜の下処理(皮むきなど)をする際の工夫点

KIRIさんは調理のYouTubeを発信されていますが、片麻痺のお体で調理をする際に意識していることや工夫されていることはありますか?

私は麻痺手の指が曲がったり伸びたりはできる方なので、できるだけ便利な道具などは使わずに今ある道具で工夫して調理しています。
でも、以前に比べると細かい動きができないので、野菜の皮を剥くときはピーラーは使わずにペティナイフを使っています。

ピーラーの方が簡単だと感じますが、なぜペティナイフを使っているんですか?

私にとってはピーラーの方が怖いんです。
左手(麻痺手)は食材を抑える時に使っていて、じゃがいもなど丸くて抑え方次第でずれる物になると、ピーラーで勢い余って切ってしまうことが怖いんです。
なので、左手で抑えながら利き手の右手でペティナイフを使っている。
ペティナイフならまだ安心して使えるんです。

あと、大根やかぼちゃなど大きくて硬く切りにくい野菜については牛刀を使っています。
慎重に行っていますが、一気に切れる切れ味のいい包丁を使っています。
麻痺手で野菜を支えるといっても長時間や力が入ると緊張が高まって握り込みが強くなるので💦
調理場面をリハビリとして考える上での意識や道具の工夫について

KIRIさんは調理をする上で意識している点や道具の工夫はありませんか?

まな板に釘が刺さった道具など勧められたけど、使わずにできるだけ発症前と同じ環境で工夫しながら調理しています。
なんで使わなかったというと、退院して3ヶ月間調理はしていたけど左手を全く使わなかったんですよね。そしたら麻痺手が動かなく、使えなくなったんです。
介護度も要支援から要介護まで一気に落ちししまったことが今でも忘れられないんです。
そうならないために、少しでも動くなら日常生活で、調理場面で使っていこうと思ったんです。
リハビリ視点で見る!KIRIさんYouTube動画
最後にKIRIさんのYouTube動画をリハビリ視点で見ていきたいと思います。
細かな工夫などたくさんあるので是非参考にしてもらえたらと思います。




まとめ
いかがでしょうか。
日常生活動作でとても複雑で身体的にも、脳にも影響する″調理″について考えていきました。
現時点で調理について困っている方も多いと思います。そして、麻痺の程度によってできることも異なると思います。道具を使う選択肢、道具を使わない選択肢など今後も紹介していけると嬉しいです。
そして、少しでもみなさんにとって有益な情報を発信できればと思います。
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参考
- セラピストプラス 手段的日常生活動作(IADL)に…料理の作業特性とその活用 より
- 薮崎さやか:食事作りを介した片麻痺の方々へのリハビリテーション=リハビリテーション現場から一実践の報告.日本食生活学会誌.2021
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